AIR motomotoへ森本凌司さんの個展を観に行った。森本さんがmotomotoの宮本華子さんと一緒に、私と妻で運営しているプロジェクトスペースkenakianに遊びに来てくれていたが、私は用事があり会うことはできなかった。その日の夜、「刺繍で作品を作っている人が今日宮本さんと来てくれたよ、森本さんっていって、今度motomotoでやってる個展観に行こうよ」と妻から誘われ「前回行った時も刺繍の作家さんだったな」と思いながら観に行くことになった。 

 後日、AIR motomotoへ行き、最初に目に飛び込んで来たのはスペースの中央に吊るされた2m四方ほどの布に多色の縫い糸が詰まったインパクトのある作品だった。宮本さんから森本さんを紹介され、そのとき初めて森本さんが男性だということに気づき、刺繍=女性だと勝手に思い込んでいたことを反省・・・ その作品はポートレイトで、裏側にまわると作家自身の祖母とのこと。そのとき私の祖母のことが頭に浮かんだ。60年代、刺繍で名画や子犬などを描く手芸キットが爆発的に大流行し、祖母も刺繍画に挑戦していた。ミレーの「晩鐘」が額に入れられ壁にかけられていた情景を鮮明に記憶している。 

 奥のスペースにも布が吊るされていた。こちら側と向こう側に異なる何かと何かを繋ぐ線のような刺繍が施されている。さらにそこに映像が映された。映像は風景のようだ。なぜか、私は子供の頃の記憶(風景)が呼び覚まされた。森本さんの作品は鑑賞者に過去の記憶と時間を思い起こさせるのだろうか? 一緒に観ていた妻が、「なぜか縫い糸も動いているように見えて。頭の中で何かうごめいているような不思議な感覚。」と呟いた。 

 帰り際、宮本さんから感想文の依頼を受けた。誰かの作品について書くのは苦手なので断りたかったのだが、断りきれずに引き受けてしまった。気がつくとあれから1年近くが経ち二人には失礼なことをしてしまったが、森本さんの刺繍による作品を観たときに温かくて切ない気持ちにさせられた感覚を今でも覚えている。 

 柳 健司
↑Back to Top